日本学生支援機構の調査によると、2025年度の在日留学生数は408,069人に達し、初めて40万人を突破した。これは政府が2033年までに達成するとしていた目標を8年も前倒しする数字だ。中国からの留学生は約13万人で依然として最大の送り出し国だが、ネパールやミャンマーなど東南アジア諸国からの伸びが著しい。背景には、円安による留学コストの相対的な低下と、日本企業の慢性的な人手不足がある。
興味深いのは、留学生の進路選択に変化が見られることだ。従来は大学院留学が主流だったが、2025年度は日本語教育機関と専修学校(専門学校)に在籍する留学生が全体の6割を超えた。学術的な学位よりも、就職に直結する実践的なスキルを求める流れが強まっている。実際、介護やIT、建築といった分野の専門学校では、卒業後の日本企業への就職率が高い水準で推移している。
学校選びで迷う前に——種類別の特徴と費用感
学校の種類によって、かかる費用も学べる内容も大きく異なる。まずは選択肢を整理しておく必要がある。
日本語学校は、大学や専門学校への進学を前提とした「準備段階」としての役割が大きい。東京圏では年間の授業料が80万円から100万円程度の学校が増えており、90万円を超えるところも珍しくない。地方都市では60万円台から見つかる場合もある。入学時期は4月と10月が一般的で、申請は入学の6〜8カ月前から動き始める。日本語能力試験(JLPT)でN5程度、あるいはJ-TESTのF級程度の基礎力が求められる。
国公立大学の学部は、入学金を含めた初年度が約82万円から93万円程度。2年次以降は授業料のみの約53万円で、授業料減免制度を利用できれば実質的な負担はさらに下がる。ただし、79%の国公立大学が入学時に日本語能力試験N1レベルを要求しており、日本留学試験(EJU)のスコアも合否を左右する。大学院の場合は研究計画書の質が重視され、指導教員との事前のコンタクトが鍵になることも多い。
私立大学は文科系で年間80万円から150万円、理工系や医学部では200万円を超えるケースもある。2026年には、少子化を背景に私立大学の再編が政策課題として浮上しており、経営状態の不安定な小規模校も存在する。志望校の定員充足率や財務状況を事前に確認しておくことは、もはや常識になりつつある。
専門学校は2年制が主流で、年間の学費は80万円から130万円程度。調理や美容、IT、介護など分野は幅広く、卒業後の就職支援が手厚い点が特徴だ。特定技能ビザへの移行もスムーズで、日本での長期就労を見据える学生にとって有力な選択肢になっている。
| 学校種別 | 年間費用の目安 | 入学に必要な日本語力 | 特徴 |
|---|
| 日本語学校 | 60万〜100万円 | JLPT N5程度 | 進学準備が中心、入学時期は4月と10月 |
| 国公立大学 | 53万〜93万円 | JLPT N1〜N2 | 授業料減免制度あり、EJUスコアが重要 |
| 私立大学 | 80万〜320万円 | JLPT N1〜N2 | 学部により費用差が大きい、経営状態の確認が必要 |
| 専門学校 | 80万〜130万円 | JLPT N2程度 | 実践的スキル習得、就職支援が充実 |
東京か、地方か——住まいと生活費のリアル
東京にこだわる理由は理解できる。情報も人も集まり、アルバイトの選択肢も多い。しかし、家賃の差は無視できない。東京23区内の単身向けアパートは月額5万円から8万円が相場で、敷金・礼金・仲介手数料などを合わせると、契約時に家賃の4〜6カ月分が必要になることもある。一方、大阪や福岡なら同条件の物件が月額3万円から5万円で見つかり、礼金不要の物件も東京より多い。
学校が運営する留学生寮は月額1万円から6万円と幅があるが、入居期間が限られているケースがほとんどだ。寮を出たあとの住まいまで見据えて計画を立てておかないと、渡日後に慌てることになる。シェアハウスは月額3万円から6万円程度で、家具や家電が備え付けられていることが多く、初期費用を抑えたい人に向いている。
食費は自炊を中心にすれば月3万円から5万円で収まる。外食が続くと8万円以上になることもある。国民健康保険は年間2万円から3万円程度で、医療費の7割がカバーされる。アルバイトは週28時間までと法律で定められており、飲食店やコンビニでの時給は東京で1,100円から1,300円程度。月に8万円から10万円を稼ぐ学生が多いが、学業との両立には工夫が必要だ。
ビザと申請——在留資格認定証明書の壁
留学ビザの取得は、多くの学生にとって最初の大きなハードルになる。まず、入学が決まった学校から「入学許可書」を受け取り、それを基に日本の出入国在留管理庁へ「在留資格認定証明書」を申請する。この審査には最短でも2〜3カ月かかるため、入学時期から逆算した早めの準備が欠かせない。証明書が交付されたら、母国の日本大使館や領事館で査証(ビザ)の発給を受ける。
申請時には、経費支弁能力を示す書類が求められる。東京では20万人民元(約400万円)相当、大阪など地方では15万人民元(約300万円)相当の預金残高証明が目安とされている。親族の収入証明や送金履歴も必要になるため、少なくとも渡航の1年前から資金計画を立て始めるのが現実的だ。
奨学金制度も確認しておきたい。日本学生支援機構(JASSO)の「留学生受入れ促進プログラム」は、EJUで優秀な成績を修めた学生に月額48,000円を給付する。大学独自の授業料減免制度や、民間団体の奨学金も多数存在する。応募のタイミングや条件は制度ごとに異なるため、学校の留学生担当窓口で情報を集めることが出発点になる。
留学エージェントをどう活用するか
個人ですべての手続きを進めることは可能だが、書類の不備やスケジュール管理のミスで渡航が遅れるリスクを考えると、専門の留学エージェントに相談する価値はある。サービス内容は、学校選びのカウンセリングから、願書の作成支援、ビザ申請の代行、渡日後の住まい手配まで幅広い。費用はサービス範囲によって異なるが、学校選定とビザ申請サポートを含む標準的なプランでは、数万円から十数万円程度が一般的だ。
エージェントを選ぶ際は、特定の学校だけを強く勧めてこないか、契約前にサービス範囲を明確に説明してくれるかといった点に注意したい。実際にそのエージェントを利用した学生の体験談をSNSや口コミサイトで確認するのも有効な方法だ。東京都内には多数の留学エージェントが拠点を構えており、オンラインでの無料相談を受け付けているところも多い。まずは複数社に話を聞き、対応の丁寧さや提案の具体性を比較することから始めると失敗しにくい。
いま動くべきこと——2026年からの準備ステップ
情報収集の段階を終えたら、具体的な行動に移るタイミングだ。2026年現在、4月入学を目指すなら、前年の夏までには学校の資料請求と願書の準備を始める必要がある。10月入学であれば、年明けから春先が勝負になる。
最初に取り組むべきは日本語力の証明だ。JLPTは年2回(7月と12月)しか受験機会がないため、試験日程をカレンダーに入れておく。EJU対策は専門の予備校やオンライン講座を利用する学生が増えている。東京の赤門会日本語学校やISI日本語学校など、留学生向けの進学サポートが充実した学校では、EJU対策講座をカリキュラムに組み込んでいるところもある。
資金面では、学費と生活費の1年分を目安に準備を始める。アルバイト収入をあてにした資金計画は危うい。為替レートの変動で予算が大きく変わることもあるため、余裕を持った金額設定が安全だ。実際に2025年から2026年にかけて東京の語学学校に通ったある中国出身の学生は「渡航前に想定していた月の生活費より2万円ほど多くかかった」と話している。円安局面ではアルバイト収入の実質的な価値も下がるため、渡航前にできるだけ多くの資金を確保しておくに越したことはない。
住まいについては、渡日直後の1〜2週間を短期賃貸や学校の寮で過ごし、現地で物件を探すという方法をとる学生も少なくない。写真だけではわからない周辺環境や通学の利便性を、実際に足を運んで確認できるからだ。ただし、4月の入学シーズンは物件の競争が激しくなるため、ある程度の候補は渡航前にオンラインで目星をつけておく方が賢明だ。
日本での留学生活は、準備の段階からすでに学びの連続だ。手続きの煩雑さに圧倒されそうになることもあるが、一つひとつ着実に進めていけば、必ず道は開ける。まずは情報を集め、自分に合った学校と暮らし方のイメージを固めること。その一歩が、日本での新しい生活への扉を開く。