日本の採用プラットフォームがこれほど増えた理由
背景には二つの大きな変化がある。ひとつは労働人口の減少だ。総務省の統計によると生産年齢人口は減少の一途をたどっており、企業は待っていても応募が来ない現実に直面している。もうひとつは採用のデジタル化で、コロナ禍を経てオンライン面接やWeb選考が一気に普及した。
こうした変化の中で、採用プラットフォームも役割ごとに細分化された。新卒向け、中途向け、ハイクラス向け、エンジニア特化型、さらには副業・フリーランス向けと、各社が特定の領域に強みを持つようになっている。東京都内のあるスタートアップ企業では、エンジニア採用にGreenを使い、ビジネス職にはWantedlyを併用するといった使い分けが一般的になりつつある。
採用現場でよく挙がる悩みは次のようなものだ。
- 求人を出しているのに応募が来ない
- 応募は来るがミスマッチが多い
- 複数サービスを契約していてコストがかさむ
- 自社に最適な媒体が分からない
これらの課題の根本には、プラットフォームの特性を理解しないまま契約してしまうケースが多い。それぞれのサービスの設計思想はかなり異なるため、闇雲に掲載しても成果には結びつかない。
主要採用プラットフォームの比較
以下の表は、日本国内で利用されている代表的な採用プラットフォームをタイプ別に整理したものだ。料金はあくまで目安であり、契約形態や求人数によって変動する。
| プラットフォーム | 主な対象 | 料金の目安 | 強み | 注意点 |
|---|
| リクナビ/マイナビ | 新卒 | 掲載プランにより変動 | 母集団形成力が圧倒的 | 競合が多く埋もれやすい |
| Indeed | 幅広い職種 | クリック課金制 | 求職者数が国内最大級 | 応募の質にばらつきあり |
| ビズリーチ | ハイクラス中途 | 年額制・成功報酬型 | 年収800万円以上の層にリーチ | 導入コストが高め |
| Wantedly | ベンチャー・IT | 月額定額制 | カルチャーマッチを重視 | 大手企業には不向き |
| Green | ITエンジニア | 年額制 | エンジニア人材の質が高い | 職種が技術系に限定 |
| LinkedIn | 外資系・グローバル人材 | 無料〜有料プラン | 海外人材・バイリンガル層 | 日本国内の一般職には弱い |
| リファラル採用ツール | 社員紹介 | ツール利用料 | 定着率が高い | 社内文化の整備が前提 |
この表からも分かるように、採用プラットフォームの選定で最も大切なのは「誰を採りたいか」を明確にすることだ。新卒なのか、即戦力の中途なのか、それとも経営幹部候補なのか。対象が曖昧なまま複数サービスに手を出すと、費用だけが膨らむ結果になりがちだ。
現場で成果を出している企業の選び方
大阪に本社を置く従業員200名規模の製造業では、長年リクナビだけで採用していたが、ここ数年応募数が半減した。そこでIndeedを追加し、さらに自社の採用サイトをリニューアルしたところ、応募数が回復したという。この企業の人事部長は「媒体ごとに応募者の層が違うと実感した。今はIndeedで裾野を広げ、自社サイトで志望度の高い人を集める二段構えにしている」と話す。
この事例に学べるのは、採用プラットフォームは組み合わせて使うのが前提だということだ。一つの媒体で全てをまかなおうとせず、以下のような役割分担を考えるとよい。
自社の採用サイトを軸に据え、Indeedや求人ボックスで認知を広げる。興味を持った求職者が検索してたどり着く先を整備しておくのだ。WantedlyやGreenで母集団を形成し、最終選考に近い層にはビズリーチのダイレクトリクルーティングを使うという発想も有効だ。
もうひとつ、忘れてはならないのがリファラル採用の活用である。社員による紹介は、カルチャーフィットの面で有利であり、採用コストも比較的低く抑えられる。専用ツールを導入する企業が増えている背景には、紹介のハードルを下げ、報奨金の管理を自動化したいというニーズがある。
採用プラットフォームを選ぶ際には、以下の点をチェックしておきたい。
- 自社の求める人材像とプラットフォームのユーザー層が合致しているか
- 料金体系が予算に見合っているか(クリック課金か定額か成果報酬か)
- 応募者管理システムとの連携が可能か
- 無料トライアルやデモで操作性を確認できるか
福岡のあるIT企業では、Greenを導入する前に1ヶ月間の試験運用を行い、実際の応募者の質や採用担当者の使い勝手を評価したという。こうした事前検証は、導入後のミスマッチを防ぐ上で有効な手段だ。
採用プラットフォーム運用の実践ポイント
プラットフォームを選んだ後も、掲載して終わりでは成果は出ない。求人原稿の書き方ひとつで応募数は大きく変わる。職務内容を具体的に書くこと、社風や働き方を正直に伝えること、そして応募者目線で情報を整理することが基本だ。
応募が来ない場合の見直しポイントとしては、職種タイトルが求職者の検索キーワードとずれていないか、給与レンジが市場相場と乖離していないか、勤務地やリモートワークの有無が明記されているかといった項目がある。特にIndeedでは検索連動型のため、タイトルと本文のキーワード設計が成否を分ける。
また、複数のプラットフォームを運用している企業では、応募者情報が各サービスに散らばって管理が煩雑になる問題がよく起きる。応募者管理システムを導入し、どの媒体からどのような人材が来ているのかを一元管理することで、費用対効果の分析も容易になる。媒体ごとの成果を数値で把握し、効果の薄いサービスは思い切って停止する判断も必要だ。
採用はゴールではなく、入社後の活躍と定着まで見据えたプロセスである。その入り口として、採用プラットフォームはあくまで道具に過ぎない。自社に合った道具を選び、使いこなすことが、これからの日本の採用市場で成果を出す鍵になるだろう。